- 提出書類その1 (診療用)
- 提出書類その2(スタッフ用)
- 医療点数本
- 医局との付き合い
開業を決心した後の準備6(書類編・その他)
開業する前には、厚生労働省(各地の厚生局)、役所、保健所等に書類の提出が必須です。遅れたら、致命的です。
1.提出書類その1(診療用)
開業1か月前には、多くの方が勤務先を退職されます。これは、単に準備期間が必要ということもありますが、診療所開設や保険医療機関として登録が開業の前月10日までに提出しなければならないからです。確か、常勤として勤務したままだったら、ダメだったはずです。
①診療所開設届(保健所)
➁保険医療機関指定申請書(厚生局)
③診療用X線装置備付届(保健所)
④麻薬管理者・施用者免許申請書(保健所)
⑤生活保護法指定医療機関指定申請書(福祉事務所等)
⑥労災保険指定医療機関指定申請書(労働基準監督署)
⑦指定難病医療機関(都道府県)
※開設届と保険医療機関指定申請は最低限必要です!もちろんこれだけではダメですけど。
①開設届
保健所って、イメージ的には、食中毒とか、感染症のときに届けを出すというようなイメージしか私はありませんでしたが、開業時には最も重要な届け出先の1つなんです。開業届を保健所に提出しなければならないのです。開業地の最寄りの保健所に申請します。内装および診療ができる状態になれば、担当者がクリニックを訪れ、問題点の指導が始まります。向精神薬の管理、注射も危険物等の管理位置まで事細かに指導されます。看板についても、実際の診療曜日・時間が異なっていると指導されます。
②保険医指定医療機関届
クリニックで保険医療を行う場合は指定医療機関コードの取得が必要です。届出先は開設所在地を管轄する厚生局都道府県事務所です。不備がある場合、何度も出なおす必要もあるそうです。
③診療用X線装置備付届
レントゲン装置について、そして、装置の入るスペースについての届け出だったと思います。
④麻薬管理者・施用者免許申請書
これは、各都道府県に申請です。私の場合は、開業後数年して、廃止届を出しました。金庫での管理とか毎年1回の届が面倒なんですね。その割に、麻薬を使用する機会は、勤務医時代よりもグンと減りましたので・・・。
⑤生活保護法指定医療機関指定申請
これを申請しないと、生活保護受給者の医療は提供できません。必須です。
⑥労災保険指定医療機関指定申請書(労働基準監督署)
整形外科で開業するならば、この申請も必須ですね。労基に提出です。
⑦指定難病医療機関申請(都道府県)
勤務医時代に比べて、初診でOPLL等と診断した患者様の書類を作成することは激減しましたが、もし難病の受給者証の方が来た場合は、必須の届け出です。
⑧個人事業の開業届(税務署)
クリニック開業時は、通常個人事業主として開業しますから、税務署に開業届を提出する必要があります。診療開始日の1か月前には手続きが必要です。
2.提出書類その2(スタッフ向け)
①労災保険の手続き
労働基準監督署に書類を提出します。院長自身は、加入できません。
②雇用保険の手続き
1週間の労働時間が20時間以上のスタッフを雇った場合は、加入手続きが必要です。院長自身は加入ができません。ハローワークに行けば、丁寧に教えていただけます。
③社会保険、厚生年金の手続き
常時従業員が5名以上になれば、社会保険も厚生年金も強制加入です。驚くなかれ、この社会保険・厚生年金は会社と本人の折半ですから、人件費に次いで、ボディブローのように効いてくる費用です。
常時5名とは、皆さんご存知ない方は、勘違いされますが、パートも常勤も全員入れて、全部で5名おれば、常時5名となります。「全員一度に5名出勤することは無いから、5名未満だ!」というわけではありませんのでご注意を!
さて、本当に少人数で開業する場合で、かつ医師会に入会した場合は、医師国保に加入できます。院長も加入できます。医師国保の掛け金は安いため、加入しない手はありません。しかし、医師国保に入っていても、常時5名の壁を超えれば、社会保険・厚生年金に強制加入です。(※ 適応除外申請をすれば常時5名以上でも医師国保に入れるようです。ただし、一旦社会保険に加入すれば、逆戻りは不可、すなわち、二度と医師国保には入れないとのこと。)
私自身は、国民年金+社保(この社保は、勤務医の時の任意継続を利用しています)です。社保は、扶養人数に関係なく、一定ですが、国保は、扶養人数に比例します(でも、確か上限があったかな)。
社会保険・厚生年金は、各地区にある年金事務所に行けば、加入の仕方を懇切丁寧に教えてくれます。
※当院は開業数年後に法人化し、私含めて、常勤スタッフは協会けんぽに加入しました。
3.医療点数本
医療点数本を先生方は読まれたことあるでしょうか?私の場合、勤務医時代は、術後に看護師さんから、「先生これはどれで算定ですか?」と言われたとき、あるいは任意保険の診断書を記載するときくらいだったでしょうか。
開業前に、一度目を通した方が良いと思います。約1500ページあります。開業医に必要なところは、そのうち、1/3程度でしょうか。なるほど、こういうことだったのかと思うことはたくさんあることでしょう。また、読めば読むほど、どう解釈すれば良いのか迷うこともあるでしょう。けっこう曖昧に記載しています。
開業後も、それなりに点数本は読むと思いますが、段々、頭にインプットされてきますので、ご心配なく!
ただし、約2年ごとに医療点数改定されます。注意が必要です。
4.医局との付き合い
私は、出身大学の整形外科医局に入局し、関連病院を2つ回った後に、大学院へ入学しましたが、結果が残せず、いわゆる単位取得退学となりました。自分の能力不足であったことは間違いありません。
しかし、敢えて言わせていただきましょう。負け犬の遠吠えですが、学位を取得できなかった理由を述べましょう。
➀研究は、筋細胞を用いた実験。臨床に関係する研究ならまだしも、基礎研究はまったく興味なし・・・。
➁研究するのであれば、細胞のことを良く知っている上司に指導して欲しかったが、直接の上司が、臨床研究のDrだった。
③一応、他の細胞研究を得意とする研究科(医学科ではない)に勉強がてら一時的に出入りしていたが、あくまでこちらはお客さん扱いにされ、かつ、その研究科の教授による私へのパワハラ行為があったため、一気にモチベーションが低下した。
④4年目の終盤にようやく結果が出てきたが、どうにもこうにも再現率が低く(20%程度)、納得がいかなかった(研究ってこんなものとは思います。小保方さんの話題が数年前にありましたが、気持ちが分かりました。改ざんってザラなんではないでしょうか)。
⑤大学院後は、関連病院へ行くことになっており、近くの病院ならば、引き続き研究および論文の仕上げができたかもしれないが、最も遠方の病院(大学から500km)へ行くことになり、気持ちが萎えた。
まぁ、好き勝手に述べましたが、大学院の間、海外の発表に3回ほど行かせてもらったし、最後の最後まで、上司が気をかけてくれたし(私が論文完成させると約束したにもかかわらず、「やるやる詐欺」だったので、今は、三行半を突きつけらえておりますが・・・)、関連病院での休む暇もないほどの仕事から解放された4年間だったので、決して無駄な4年間ではなかったと思っています。あと、4年間で、将来の自分のこと・家族のこと(次女が障害児)をゆっくり考えることができました。今、地元で、開業できているのも、大学院に行ったからこそだと思います。
さて、本来ならば、しっかり関連病院で働いて、医局に貢献して、その後、教授の許可・同門会長の許可をいただいて、開業するのが筋なのでしょうが、私は、大学院から出たあとの関連病院での勤務が、医局人事で動いた最後になります。医局からすると、わずか医局入局後9年で離脱した
「裏切り者 」なのです。開業数か月前に、開業するということで、6年ぶりくらいに、医局がらみの会に出席しましたが、居心地の悪さは、半端なかったです。
同門も、もう辞めてもいいんでしょうけど、今でも会費を納めています。大きな学会に行って、同門で集まっても、なんか、肩身が狭いです。辞めても辞めなくても、私の存在感は無いですから、あとは辞め方でしょうね。ため息がでますね・・・
開業される先生方は、私のような医局人事の離れ方や、開業はお勧めしません。あくまでも穏便に開業していただきたい です。 開業って、すべて自分でかじ取りする必要があります。私のような一匹狼の人間の方が、脱線することもなくお仕事してきた先生方よりも、打たれ強いのかもしれません。医局とのかかわりもなく、また、医師会にも加入していない私ですが、何とか開業できておりますので、皆さんならきっと大丈夫でしょう。