院長のワンオペ・・・
開業って、噂通り、やっぱり、医業以外にやることが大変多いです。開業時は、身内に手伝ってくれる人がいると、心強いでしょうね。わたくしの場合は・・・。
1.院長業務
勤務医時代の仕事は、9割が実際の医療行為であり、残り1割が会議や書類作成等の事務的なことだったでしょうか。
開業すれば、どうなると思いますか?
私の場合ですが、医療行為と事務作業が半々です。朝は6時過ぎには出勤し、何らかの事務作業をしています。夜は、スタッフが帰り次第、帰宅の途につきます。
帰宅しても、クリニックのことをしょっちゅう考えています。将来クリニックをどうしていくか、スタッフ増員時期はいつにするか、スタッフのモチベーションアップは何が良いか、売り上げアップ・患者満足度アップには何が有効か、広告をもっと出すべきか減らすべきか、等々、毎日、いろんなことを考えています。
スタッフが退職する時は、一番バタバタしますね。応募をかける作業、面接する時間の確保、契約書類作成の時間等でしょうか。給与計算や日々の売上の記帳などはルーチンワークになったので、しんどいとは思わなくなりました。
先日(開業数か月後)は、初のボーナス支給をしましたが、支給額について相当悩みましたねぇ。
私の事務作業;ホームページ更新、売上記帳、帳簿、領収書整理、在庫管理、勤怠管理、給与管理、レセプト整理など
2.レセプトチェック
レセプト(診療報酬明細書)は、勤務医の先生はあまりピンと来ないと思います。整形外科であれば、外固定や関節注射の点数については、ご存知でも、再診料やリハビリ点数なんかはチンプンカンプンではないでしょうか?
私も開業当初は、何となく理解していたつもりでも、やはり細かいことは分からず、受付・医療事務がチェックしておりました。今は、すでに、ほぼ把握しているので、たいていのことはわかります。
悲しいかな、医療点数を知れば知るほど、整形外科の点数は低く設定されていることが良く分かります。内科の先生は、優遇されていると思いますよ。あと、かかりつけ医制度を国は推奨していますが、整形外科は所詮、サブの科ですから、総合医のようなかかりつけ医にはそれなりに努力しないとなれない仕組みです。
さて、日々の医療点数の総まとめとなるのが、毎月初めに行うレセプトチェックです。翌月の10日までにレセプトを審査支払機関(支払基金または国保連合会)へ提出しないと、保険者から請求金額の支払いをしてもらえないため、スタッフへの給与や借金が払えなくなります。
医療事務が毎月初めにレセプトチェックして、それを院長が最終的に確認し、審査支払機関へ提出するのが、一般的なクリニック・病院のやり方ではないでしょうか?私のところは、開業当初は、レセプトチェックを外部に委託(スタッフ関西)していました。レセプト1件当たり、100円です。
委託理由の1つは、当院のスタッフの仕事量が増えるということ、すなわち残業しなければならないということが大きかったです。医療事務の常勤は1名おりましたが、遠方からの勤務だったので、残業はほぼ不可能でした。パートに任せるのも良かったのですが、なかなか頼みにくかったのも事実です。また、プレッシャーがありますよね。見落としがあれば、やはり、責められる可能性があるので、皆、簡単には引き受けたくないですから。それに、外部委託はプロ中のプロの仕事ですから、レセプト請求時の要点は、よくご存じです。
外部委託によって、査定・減点の予防にもなったし、どんな場合に、査定・減点されるか、傾向がつかめました。とは言っても、開業当初は、理不尽な査定・減点があると思いますが、めげずに、再審査請求をしましょう!
今は、レセプト枚数も増えている関係で、委託費用もかなり大きなものになりますから、外部委託せず、院長自らが休みの日を利用して、チェックしております。自分でやるようになってから、査定・減点が減るようになりました。「これ、どうかな?微妙かな?」と思った患者のレセの記録を残しておいて、2か月後に国保・社保からバックされた時に、見直すクセをつけておけば、自然と査定・減点は減る気がします。また、患者を診察室で診るときにできるだけ、その場で漏れ・間違いが無いか、集中してやるべきでしょうね。かなり、疲れますが・・・。
3.妻の役割
私の嫁は、開業に関してノータッチです。興味が無いというよりも、非協力的です。まぁ、積年の恨み(笑)が、あるのかもしれないですが、奥様が専業主婦で、手伝ってくれるのであれば、専従者給与として給与を出した方がいいですね。
専従者給与(控除)とは、青色申告や白色申告を行う者の配偶者や親族が事業を手伝っている場合に、要件を満たすと確定申告時に受けられる控除のひとつです。節税につながります。しかし、ちゃんと実態がないと、場合によって、脱税と言われることもあるので注意が必要です。
奥様が手伝ってくれるのであれば、勤怠管理や給与計算、物品の整理・発注等、任すことができますね。スタッフと院長の間を取り持つ役割もしてもらえそうです。ただ、注意すべき点は、奥様が出しゃばって、スタッフと溝ができてしまう可能性があることですね。
4.開業後のバイト
預貯金がたくさんある先生方は、何も心配いりません。私は、申し上げましたように、自己資金を捻出できずに開業したので、クリニック定休日には、バイトをしています。主には、生活費捻出のためですね。9か月経過した現時点では、クリニックの利益は出ていますが、まだ余裕はありませんので、バイトしています。
勤務医時代から、毎週1回の研究日(趣味に使うのも良し、勉強するのも良し)がありましたが、ずっと、私はバイトをしています。趣味が特にないですからねぇ。趣味と言えば、ドライブ程度なので、ちょうど、自宅から1時間程度のドライブを楽しめるところのパートを続けています。1時間程度のところは、医師不足の病院が多く、結構いい給与をいただけるので、一石二鳥かもしれませんね!
バイトを続ける理由はまだあります。
開業すれば、確定申告がもれなく付いてきます。私は、勤務医時代もバイトをしていたので、10年以上、確定申告しています。確定申告しても、バイトでの源泉徴収額が少ないため、還付されることはほとんどなく、たいてい追加で支払っていました。
開業するとどうなるでしょうか?開業すれば、勤務医と異なり、毎月給与から天引き(源泉徴収)されることが無いので、確定申告時に相当な額を一気に支払うことになるのです!!恐ろしや~。
が、実は開業したての頃は、からくりがありまして、開業費用が多く、いわゆる経費・減価償却等があるため、支払った税金の多くは還付されます。還付の際、ミソなのが、どれだけ先に源泉徴収されたかということです。私のように、7月末まで勤務医をしていた場合、約半年間徴収された源泉徴収分が、翌年の春に、ほぼ全額還付されました。これが無ければ、生活は相当苦しかったと思います。
2年目以降も、経費や減価償却分もあるでしょうし、売り上げもまだ多くないでしょうから、確定申告後に支払う所得税もそれほど無いか、あるいは、また還付されるかもしれません。還付される場合は、バイトによる源泉徴収分ですね。ですので、今でも、バイトに足しげく通っているわけです。バイトは、2件行っています。そのうち、1件はどこかのタイミングで辞めたいと思っていますが。
※バイト生活は開業後2年ほどで、以後は辞めております。
5.税金
確定申告後の5月頃に、「なんじゃこりゃ~!」と皆さん言われるはずです。税理士から前もって聞いていれば、まあ大丈夫なんでしょうが・・・。
償却資産税ですね。導入した内装・設備にも税金がかかるという意味不明のものです。150万の請求が来ました。これ、下がっていくとは言え、毎年続くのでしょうねぇ・・・。
償却資産税の前には、所得税の支払いも必要になりますね。あいにく、開業翌年は、還付されましたが、来年以降はどうだか・・・。
毎月、スタッフの給与の源泉徴収分を税務署に払いに行きますが、この6月から、スタッフの前年度の住民税特別徴収分も市役所に払いに行っています。面倒ですよねぇ。
世の中、税金ばかりです。
6.節税対策
そもそも、私が開業しようと思ったきっかけの1つは税金です。納税は国民の義務です。 しか~し、税金が高すぎる!!
勤務医でも、医局人事で回る病院では、給与は交渉することもなく、自動的に病院が決めます(基本的に安い!)。さらに、自由に年休を取ることも許されず、夜中は呼び出しがあったり、緊急手術があったりと、多忙を極めます。ずばり私の所属していた大学の医局人事で回る病院では、その多くは、仕事量に見合った給与額ではありません。私が人事を離れた理由は、実は、それも大きいです。「医師なのにけしからん!」という声も聞こえてきますが、やっぱり、仕事をしただけ評価してくれるのがいいですよね。評価は、「よく頑張ったね!」というお褒めの言葉ではなく、やっぱり「給与」になると思います。
あまりに多忙な勤務医は、お金を使う時間もありません。ですので、結構貯金できている先生方いらっしゃると思います。所得税も給与から源泉徴収されますし、パート勤務もしていない先生は、特に確定申告の必要がありませんので、それほど税金を意識することも無いでしょう。しかし、パートをしたり、あるいは、医局人事を離れて、自分で病院と交渉してある程度高額な給与をもらっている勤務医の先生方は、やはり、納税額の多さに嫌気が差すののではないでしょうか?
私も、医局人事を離れて、最初の病院では、給与が1.5倍になりましたし、その次の病院ではさらに増えました。ですので、納税額は、相当なものになっていたわけです。さらに、パートにも行っていたので、所得税+住民税によって、給与の約半分は税金に消えていました。
そのため、開業前の2年間は、いろいろ節税対策に取り組みました。
まずは、iDeCo。個人型確定拠出年金ですね。厚生年金の上乗せ年金です。勤務医の場合は、月額掛金2.3万が上限で、控除もできます。開業したら、事業者にて、月額上限は6.8万です。
※現在は、法人化しているので、iDeCoの月額掛金は23,000円に戻りました。
次に、控除ではないですが、NISA。少額投資非課税制度ですね。株や投資信託などの金融商品に投資した場合に、その売却益や配当金への税金がかからない制度です。上限は120万で最大5年間です。積み立てNISAやジュニアNISAなどもあります。最も、株価が暴落したら利益もくそもありません。単に無駄な投資だったということになります。私は、株には詳しくありませんが、とりあえず、東京オリンピックまでは、株価は下がりはしないだろうという気持ちで、NISAをしております。売却しても、5年間は引き出すことができないのがネックです。
ふるさと納税も皆さんご存知ですよね。ちゃんと課税所得を予想した上で、手を出しましょう。うっかり上限をオーバーしては、何のためにしたのが分からなくなります。昨年は開業年度ということで、まったく所得額が分からず(当時、ダメな税理士にて、助言も無かった)。そのため、ふるさと納税はせず。その前の年は、しっかり利益を得ました!今年(平成30年)は、それなりにふるさと納税できるはず。新しい税理士からの指示待ちです!
開業の2年前に、不動産投資に目を付けました。不動産投資ですが、売却益を得るキャピタルゲイン(これによってバブル時代に多くの不動産王が誕生しました)ではなく、家賃から収入を得るインカムゲインの方が、節税対策にもなり得るとのことで、本を読み漁りました。
しかし、結局のところ、素人は手出しすると痛い目に合うだろうという気持ちと、いわゆるお得な水面下情報を得るのには、それこそネットのようなデジタルツールよりもアナログ的に、積極的に人とかかわることができないと良い物件は入手できないということが分かり、未だに不動産賃貸業には手を出しておりません。
もっとも、不動産をするには、それなりの手元資金が必要です。仮に区分所有であれ、一棟所有であれ、何らかの不動産を得たとしても、空室リスクは常につきまといますし、修繕費用のための費用も必要になります。医師をしながら、片手間にできる仕事なのかは、何とも言えません。よっぽど安くて有能な管理会社と契約していれば、大丈夫かもしれませんが・・・。
最終的に、私の場合、不動産ではなく、太陽光発電をすることになりました。しかし、美味しい時期(売電価格が40円/kwh以上とか、一括償却できる年度)は過ぎており、うま味が無い時期の太陽光発電でしたので、今なお、借り入れしてやるべきだったか、何とも言えない状況です。
実際のところ、残念ながら、年間売電額は年間返済額とほぼ同じです。控除分で、ちょびっと利益が出る程度です。たまに、落雷や台風後の停電で、発電がストップした時は、県外にある太陽光発電まで、業者に行ってもらいますが、すぐと行ってもらえるというわけではないため、復旧するまで、売電ゼロの日が続きます。停電以外にも、初年度の大雪は困りました。大雪で、パネルに雪が積もれば、発電まったくしませんので・・・。それと、償却資産税も必要になります。
結局のところ、無駄な借り入れが増えただけでしょうか・・・。あと数年してみないと、何とも言えませんねぇ。15年後にローンが終わってから、売電期間終了までの残り5年間がそれなりの利益になりますが、はたして、それまでにいろんな問題が起こらないか(電力会社の買い取り価格が強制的に減らされるとか、パネルやパワコンの故障など)が不安要素です。
開業後は、資金に余裕があれば、小規模企業共済制度を利用するのが良いでしょう。月額7万上限です。いわゆる事業者の退職金にもなりますし、掛け金は控除もされます。私は、つい先日まで、スタッフ数の上限を超えているので、加入はできないと思い込んでいたのですが、新しい税理士に確認したところ、今からでも加入可能ということが判明しました。ということで、加入の手続きを今度する予定です!
結局、節税は限界がありますし、たかだが節税できる額は、知れています。節税のことをあれこれ考えるくらいならば、仕事をせっせと頑張り、税理士に適宜節税案をもらう方がいいかもしれません。