クリニック開業をしていれば、地域の膝痛や腰痛のごくありふれた患者を診るのがほとんどですから、誰にでも分かりやすく説明しなければなりません。大学医局在籍時代は、バンバン最新の治療メソッドや英語が飛び交っていましたよね。そういう環境でいれば、常にアカデミックな頭をキープできるのですが、開業してしまえば、ありふれた疾患を、わかりやすく、手短に説明し患者に納得していただくかが重要になりますので、自然と稚拙な説明になってしまいます。
しかし、こんな私でも、仮に、患者が医療関係者の場合、モードの切り替えをします。
看護師ならば、「この程度のことや用語を知っているだろう」という感じで説明します。介護職の方なら、「看護師より、もう少し分かりやすく説明しないと理解できないかなぁ」と考えながらです。最近は、できるだけ、初診の方は、レントゲンやエコー検査に行く前に、職業を聞いています。職業を聞いて、その職種に合わせて、話をもっていく感じにしています。教職員の方や、お役所関係の方は、ちょっと固い方が多いので、理論的に説明しております。ただ、職種を聞きそびれてしまう場合もあります。
にこやかにこちらの説明を聞いていただいて、納得してもらったかなぁと思っていたら、「先生、実は、私、○○科のドクターしています」な~んて、最後に言われると、ちょっとテンぱってしまい、アホな説明してもうたなぁと自己嫌悪になります。
先日、30歳くらいの女性が0歳児を連れて、来院されました。2日前に、ベッドから落ちて、腕を痛がっているとのこと。来院直前に、かかりつけ小児科に相談し、そこからこちらへの紹介でした。
小児を見る場合、明らかに陽性部分のみを診ていたら、他に見落としがあったということがあります。受傷時の状況を考えると、ベッドから落ちた場合、乳幼児は頭でっかちですから、骨折するならば、鎖骨あたりかなぁと思い、服をめくると一目瞭然で、左鎖骨部の腫脹が見られました。その場合でも、すぐにレントゲンオーダーではなく、左右差のチェック、上腕・前腕・手指の視診・触診も行います。案の定、レントゲンでは、やはり鎖骨の骨折を認めました。
で、その母に、「鎖骨骨折ですので、バンドで固定します。少し曲がっていますが、子供の場合、成長とともに自家矯正が働くので、後遺症も無く治りますよ。でも、しばらく通院が必要です。1週間後にお越しください。もしよければ、スマホでモニタ画面(レントゲン)撮ってくださいね」
母「私、放射線科医なんです。骨折は見たら分かりました。ありがとうございます」
私(なんや、医者かいな!!自分の子供やのに、体のどこ見てんねん!問診票にも体の不具合の部分、上肢全体に〇つけとるやん!!)と内心呆れました・・・
その後、母親に勤務先を聞いて、気を使って、自宅近くの整形外科あるいは、職場の整形外科宛てに紹介状を書いてあげました(宛先は無しで)。もちろん、当院への通院もどうぞと説明しました。
が、何と、その初診日の2日後の日付で、当院近くの整形外科からの紹介状返書が届きました。この母親、微妙ですね。なんにも人の話聞いていない・・・。N県立医大出身とのことですが、一般的な感覚がずれています。
もちろん、私の医療行為・説明は、十分で丁寧だったと自負しております。
医者でも、千差万別ですね。紹介してきた小児科のドクターも、受傷から2日経過した鎖骨骨折くらい視診で分かるはずなんですけど、紹介状には、それらしい内容は一切ありませんでした・・・。