開業後に、どんな感じで患者数や売上が増えていくか、考える必要があります。
開業を決心した後の準備2(シュミレーション)
1.シュミレーション1
開業前、患者数の予想と売上について、シュミレーションしました。これは、銀行融資を受ける時にも必要でして、いろいろ私なりに、考えました。
まずは、患者数。開業月は20~30名/日、翌月からコンスタントに5名ずつ増えていくという、何とも安易な考えでした。自分でもこんなうまくいくはずはないと思いながら、銀行に提出することも考えて意欲的に予測したわけです(笑)。
仮に、その患者数であった場合、次に考えるべきは、患者1名あたりの単価(客単価)です。内科ならば、40名も1日くれば、十分な売上でしょうが、整形は客単価が安いですからねぇ。倍の80名は最低ラインでしょう。できれば、1日100人がとりあえずの目標値でした。
客単価を考えるにあたり、どうすれば、単価を上げられるのかもいろいろ考えました。
勤務医は、ある程度、手術点数については理解しているのですが、外来診察やレントゲンの点数については、ほとんど理解していないのではないかと思います。私、勤務医時代は、整形外科部長という立場ながら、外来患者1名あたりの単価がどれくらいなのか、考えることも無かったです。ただ、整形外科は薄利多売ということは、知っていました。
いざ、いろいろシュミレーションすると、「本当にやっていけるの?」というぐらいの低い点数でした。ですので、私、医療点数本を読み、客単価を上げるためには、どうすればいいか、いろいろ悩み考えました。整形外科の場合は、重要なものは、➀レントゲン撮影と➁リハビリテーションです。
2.シュミレーション2
シュミレーション1のところでも述べましたが、➀のレントゲンは、高点数ですので、初診患者には必須です。骨折の場合は、定期的にレントゲン撮影しますが、ご高齢の方で、慢性疾患の場合も、数か月ごとにレントゲン撮影をすることにしました。
基本的には、多くの方は、「放射線」にマイナスのイメージを持っていますから、レントゲンの必要性についての十分な説明を行わなければいけません。例えば、「定期的に骨腫瘍や骨壊死の有無のチェックが必要です」とか、「リハビリを継続提供するためには、骨の脆弱性があるか調べる必要があります」とか、患者にできるだけ分かりやすく納得してもらう説明が必要でしょう。そのためには、普段から患者とのコミュニケーションが不可欠ですね。
レントゲン撮影に要する時間、そしてできるだけ美しく撮影する技術を考えると、私は、放射線技師は常勤が必要だと直感的に思いました。ここは、先生によっては、意見が異なると思います。
「開業当初から、常勤を雇って、人件費大丈夫なのか?」というご意見もあるでしょう。
看護師に患者の肢位決め・カセット設置してもらって、院長がレントゲンボタンを押すという案ももちろん考えました。でも、看護師への給与と放射線技師への給与はそれほど変わらないのです。また、人件費を削り過ぎて、資格の無い、診療助手的な人に、肢位決め・カセット設置をしてもらうのは、患者の転倒・転落等、何かあった時に、責任問題が生じますよね。究極の人件費削減案は、院長がそのあたり、全部一人で行うことですが、あまりにも非効率的でしょう。患者にレントゲン撮影に行ってもらっている間に、別の患者2人は診察できますから・・・。
時は金なりです。患者側からしても、「このクリニックに来たら、すぐに診察してくれる」と初診時に感じてくれたら、きっとまた次の機会にも、足を運んでくれます。ちなみに、私のクリニックの待ち時間はとても少ないと思います(予約システムがうまく機能していることと、私のカルテ入力が速いことで、待ち時間が短くなっているのです)。
放射線技師はパートで雇用するという案も考えましたが、同じ患者のフォローアップ撮影でも、毎回、技術的な差が出てもストレスですし、患者からしてみれば、再診時、同じ技師が撮影すれば、安心感につながると思います。やっぱり、院長の指示通りにやってくれる常勤が一番なのではないかと思います。
3.シュミレーション3
➁のリハビリについては、物療(消炎鎮痛処置)だけではなく、より点数の高い、運動器リハビリテーションも当初より積極的に行うことにしました。
運動器リハビリテーションは、一番低い施設基準Ⅲであれば、消炎鎮痛の点数に毛の生えた程度の点数ですが、施設基準がⅡに上がれば、それなりに点数がアップし、収益になります。施設基準がⅢにしてもⅡにしても、その要件の1つに常勤理学療法士あるいは常勤作業療法士が必須となります。Ⅲは常勤1名、Ⅱは常勤2名以上が必要ですから、それなりに人件費がかかります。当院は、常勤療法士が2名+パート療法士1名でスタートしました。
しかし、療法士の1名は、なんと「柔道整復師」であり、施設基準にまったく適合しない者を雇用してしまったのです。これについては、厳しい意見もあるとは思いますが、実際のところ、常勤希望の理学・作業療法士の応募が当時皆無だったのです・・・。で、募集もしていないのに、自ら、「スポーツ障害に興味があります、雇ってください!」と言ってきた柔道整復師を雇用したわけです。ただ、私も情熱だけで、雇用したのでは、さすがにアホな経営者です。
ですので、いろいろ調べまくって、柔道整復師でも講習会と試験を受ければ、認定理学療法士(みなし理学療法士とも言う)になれるということが分かりました。すなわち、認定理学療法士であれば、当院は施設基準ⅢからⅡに上がれるというわけですよね。ただし、認定理学療法士の施術の場合は、施設基準がⅡであっても、Ⅲの分しか算定できません。これは同じ施術をしていても、悲しいですよね。当院の場合、開業4か月で、その柔道整復師が、無事、認定理学療法士となり、翌月から、施設基準Ⅱに格上げできました。
そんなこんなで、自分なりに考えたシュミレーション表ですが、開業1年経過した頃に、たまたま書類の整理中に見つけました。やっぱり、患者数については、絵に描いた餅だなぁと思ってしまいました。しかし、なぜか、売上については、実は、シュミレーション以上になっています(^^;)。
スタッフ数・雇用形態のみならず、予約システムや最新のレントゲン、クラウド型電子カルテ等は、損して得とれです。未来への投資です。最初からケチっていては、大きくは進みません。内装もそうです。今どき、チープだと、他と差別化できません。診療曜日や診療時間もそうですね。ただし、やりすぎは禁物です。経営破綻します。体も壊します。スタッフもついてこられません。