開業を決心した後の準備3(スタッフ)
スタッフは、開業前も開業後も悩みの種ですね。
1.スタッフ募集
スタッフの募集は、勤務2か月前には開始しなければなりません。開業するまでにスタッフ教育も必要ですから、開業予定日の3か月前に募集開始ということになります。
費用はかかりますが、私の場合は、タウンワーク、とらばーゆを利用しました。2~4週間募集をかけて、それぞれ15~20万くらいだったと思います。募集開始前に、業者と話し合いをして、どういう募集をするか打ち合わせが必要なので、結局のところ、開業予定日の4か月前くらいからは動き始めなければなりませんね。
ハローワークは公的なところですので、無料です。ここは募集かけておいても損はありません。ハローワークで職を見つける方は、未だにたくさんいます。ハローワークは直接出向く必要がありますが、3か月間は掲載し続けられます。
ホームページを開業前から作成している場合は、そこに求人情報を載せるのも1つの手です。ただ、開業後に新たにスタッフ募集をかける時は、ホームぺージへの記載は注意が必要です。常に人手不足の状態であれば、来院される患者様も不安になるでしょうし、時給や待遇を記載するのは、繊細なところだけに書かない方が良いかもしれませんね。
2.面接
開業される先生は、すでに、患者様を数千人~数万人診察されていると思います。よって、面接をすれば、経験上、その人のしぐさや話し方で、だいたいどういう人間かというのは分かると思います。
私は、開業前に、受付・医療事務希望の方と約20名面接しました。新規開業の面接を受けに来る方は、とても多いです。新しいクリニックで、人間関係もゼロからスタートしたいという方もいれば、単に新しい物好きの方もいますし、自己アピールが強すぎる人、声が小さい人、目を合わすことができない人、鬱っぽい人、遅刻する人、連絡もせず来ない人など、いろんな方がおりました。
この人は、良いと採用した方の中にも、「実は、先生には話していないですけど、〇〇です」とか、「前の職場では、人間関係が悪くて辞めましたとか」、面接だけではそこまで到底読めないことなどを、ポロッと話してくれるスタッフもおります。皆さん、いろんな人生を歩んでます(笑)。
募集時に、応募が来なくて困った職種は、理学療法士です。売り手市場で、募集してもまったく応募してこないのです。整形外科では、運動器リハビリテーションの算定条件は、常勤の理学あるいは作業療法士が最低1名です。ギリギリになって、常勤希望の作業療法士が面接に来たので、とりあえずはホッとしましたが・・・。こんな追い込まれた時でも、冷静になって、安易に採用しないことも大事と思います。ちなみに、私が採用した作業療法士は、今も頑張って勤務してくれています!
私は、履歴書だけで、判断することはせず、応募してきたほとんどの人と面接しました。多くの面接者とは、一期一会となりますが、その方々から、何かを学べます。また、私自身がそうなんですが、写真うつりが極端に悪い人いますから(笑)、せっかくの人材を逃すことになります。開業される先生も、時間の許す限り、面接をすることをお勧めします。
履歴書の写真が、私服バリバリの方がいました。彼は、柔道整復師なんですが、柔整募集していないのに、応募してきたんです。今も、何かの時に笑い話となりますが、何を隠そう、彼は、当院で働いています(笑)!
あと、履歴書をタブレットで提示してきた方もいました。女性なんですが、強者ですよね。その時は、不採用としましたが、彼女、数か月後にまた連絡してきました。その時は、ちゃんと履歴書持参されました。結局、タイミングの問題で、他のクリニックで勤務することになりましたが・・・。
3.スタッフ選定
どの業種でも言えますが、最初も最後も人です。信頼する・信頼されるというのは、社会で生きていくためには、当たり前のことなんですが、開業すれば、経営者vs雇用者なんです。今までと同じ雇用される側の人間同士の付き合いではなくなります。これ、結構重要です
!
院長にとっては、病院で一緒に働いてきたコメディカルを勧誘・採用し、彼ら彼女らが、院長をサポートしてくれるというのは、開業時の不安な時期には、まさに縁の下の力持ち的存在でしょう。勧誘され、採用されたスタッフは、とてもうれしいでしょう。しかし、中には、妙な優越感に浸ってしまうスタッフもいると思います。他のスタッフとうまくやっていけるか微妙ですよね。
病院は福利厚生が充実していますので、年休が簡単に取れます。さらに、病院ではどちらかと言えば、同じ職種同士で過ごすことが多いです。クリニックでは、勤務時間中は、しょっちゅう院長と接します。スタッフにとっては、院長という存在は大きく、プレッシャーを常に感じます。病院とでは、大きく環境が異なりますよね。
私も開業前は不安一杯だったので、過去に職場でしっかり働いてくれた人達を一応、勧誘しました。まぁ、勧誘するからにはそれなりの給与を用意し、交通費も捻出し、自分の理念を説明し、等々考えれば、厳しいことは分かっていたし、実際、声をかけた方も、種々の理由をつけて、やんわり断ってきました。もし、勤務してくれていても、果たして、今も勤務してくれているかは何とも言えませんね。
さて、スタッフに対しては、ある程度、仲良く、友達感覚で接していれば良いと思って、開業時より、そういうスタンスで、スタッフと接していましたが、その結果、いろんなことが起きました。今は、あまり個人のことには深入りせず、距離を保つようにしています。スタッフの細かい家庭のこととか、趣味とかは、話の流れで聞くことになれば、聞けばいいでしょうが、院長から根ほり葉ほり聞く必要はまったくありません。
距離を保つと言っても、仕事以外の楽しいイベントもうまく取り入れるべきでしょう!当院では、飲み会・食事会は、1~2か月に1度やっていますが、やっぱりは、スタッフ喜びますね!
整形外科開業の場合、今の時代、リハビリを行うのが当たり前であり、患者様もそれを希望されて来院されることが多いです。街中は、整骨院・接骨院であふれかえっており、当院周辺500mのところにも17~18件があります。彼らは、慢性疾患であっても患者様に保険をうまく使わせながら、施術をしています。当然、当院としても、整骨院・接骨院に負けない治療を行わなければなりません。彼らより優位に立つためにも、人件費はかかりますが、当初より理学・作業療法士を雇用し、運動器リハビリテーションを患者様に提
供しております。
整形外科の場合、開業時に迷うのが、レントゲン技師を雇うべきかというところです。院長自ら撮影するクリニックもあるでしょうが、その場合、患者様の体位を整えたり、フィルムを設置するのはナースか助手の人だと思います。そして、最後に院長がレントゲンのスイッチを押す。これ、結構人手がいりますし、院長自身の時間も取られます。何よりも、やはりレントゲン技師は、技術があり、綺麗に撮影・調節してくれます。私のクリニックには、常勤の技師が1名おります。レントゲン業務以外にもいろいろ働いてくれて、縁の下の力持ちとは、まさに彼のことです!
受付・医療事務について、やはり、医療に関わったことの無い方を雇用しても、なかなかついて来れないことが多いです。「会計だけできたら良い」と思われている先生方いらっしゃると思いますが、受付はオールマイティプレーヤー的なことが要求されます。患者対応、医療用語の理解、医師との連携、レセプト等々、いろいろやっていただくことがたくさんあります。もっとも、今は、電子カルテ・レセコンが発展しているので、いわゆる月初めのレセプトチェックには、それほど受付・医療事務の方の手を煩わせることは無いです。
受付の方は、開業9ヵ月目までに、紆余曲折ありましたが、のべ12名雇いました(令和5年現在、4名体制。)し、面接ではたくさんの人と会ってきましたが、やはり、ベテランの方が心強いです。例の悪徳コンサル業者は、「若い女性で綺麗な人を雇わなければならない」と言ってましたが、まったくナンセンスです
(笑)。物腰が柔らかいけれども、言うべきことはしっかり言う、そして人生経験豊かな方が良いですね!
※「退職した人達の分析」はこちら!」
最後に、ナース・・・。ナース選びは慎重にしてください!ナースの方を敵に回すつもりは毛頭ありませんが、ナースは、今も昔も売り手市場です。何か嫌なことがあれば、辞めてしまいます。また、雇用条件に厳しいです。立場的に、院内で、仕切り役になってしまうこともあるでしょう。他の職種とのトラブルにもなり得ます。院長の首を絞めるような行為もあるかもしれません。
私のクリニックの場合、開業時1名いたナースは開業4か月目に退職し、以後、私が新たに募集することなく、今に至ります。点滴も採血も薬剤の管理も、全部院長自らしております。お蔭様で、点滴も採血もテクニック上達しました!何よりも、ナースは人件費がかかります。
4.給与設定
スタッフの給与、悩みますよねぇ・・・。有能なコンサル業者や社労士がいれば、彼らの意見を聞きながら、給与を決定できるでしょう。私の場合、ダメダメコンサル業者だったし、そもそも社労士とは契約していなかったので、相場を調べて、それを元に給与を決定しました。
まず、阪神地区ならば、毎週日曜日折り込みチラシにいろんな業種の応募広告が入っています。アイデムやディースターが多いでしょうか。あるいは、コンビニに置いてあるタウンワークなどでしょうか。そこに、年中、クリニック・病院のスタッフ募集が載っていますので、それを元に平均値を割り出します。
開業時は、運転資金も多く、「お金を少し周辺より高くすれば、良いスタッフが集まるだろう」という気持ちで、ちょっと高めの給与で募集してしまう先生もいると思います。しかし、新規オープンの場合、時給や月給抜きにして、新しい環境で、新しいスタッフ同士で、新しい先生の元で、心機一転働きたいという方も多いです。従って、そこまで意識して給与を高くする必要は無いと私は思っています。
なかなか集まりにくい職種であっても、私はそう思います。
給与額とともに、重要なのが、常勤かパートかということ。できるだけ開業当初は、常勤は雇わずにパート中心にすることが望ましいです。私の場合は、しっかり仕事をしてもらうためにも、常勤を各部署1名は必要と思っていたので、当初より常勤5名となりましたが、開業後3か月は人件費だけで収支は赤字になっていました。
そのため、とても経営的に苦しい状況で、一部、スタッフ(いわゆるお局様ナース)にはパートへの変更をお願いしました。この方は、最終的には自ら退職しましたが、ちょっと問題発言や患者へのアクシデント(インシデントではない)があったのと、院長の業務上の指示に従えなかったので、辞めていただいて正解でした。これで、流れが良い方向に行けば良かったのですが、そのスタッフに吹き込まれたのか、ただならぬ雰囲気を察してか、他の女性陣は次々退職希望を出してきました。その時が、今思えば、精神的に一番追い込まれた時期でしたね。
この貴重な経験があり、それを乗り越えられたから、次、たいていのことがあっても、私は動じないでしょう。
賞与を払うかどうかも、しっかり採用を決めるときに話すべきです。私の場合は、採用前に、最初の冬の賞与は払えないと宣言していましたので、良かったと思います。賞与って、必ずもらえると思い込んでいる方がいるので、早めに説明してくださいね。賞与については、契約時に夏と冬にそれぞれ1か月分と言っておけばいいのではないでしょうか。経営に余裕があっても、それぞれ1.5か月分で十分と思います。
知り合いの先輩開業医に聞いていましたが、高い給与で募集をかけた場合、それに応募してくる人は、採用した後も残業代等にも、こまかいらしく、急に辞めたりする人
がけっこう多いらしいです。