開業後どうなった?

 開業後に、どうなるか、開業を考えているドクターが一番気になるところでしょうが、まぁ、なるようにしかなりません。

1.内覧会

 内覧会は開業直前に行いました。内覧会は大事ですよね。患者様からすると、初めて行くところがどんな感じで、どんな医師やスタッフがいるのが、大変気になります。私のクリニックでは、開業前月末に3日間も内覧会を行いました。3日間(これも例のコンサル業者の勧め)は、今思えば不要でした。1~2日間で十分と思います。  

 内覧会では、タオルやうちわを配ったり、お茶菓子を渡したりすることが多いですが、当院では、出張メロンパンにしました。メロンパンを車内で焼いて、お渡しするというものでして、なかなか好評でした。  

 内覧会には、知人やお世話になった方々がお見えになります。たくさんお花をいただきますので、置き場所に困るかもしれません。近くの花屋さん数件に、「もしお祝いの依頼があれば、連名にしてお花はまとめて下さい」と予め伝えておいてもいいかもしれません。また、お祝いをいただいた方にはお礼をすることも忘れてはいけませんね。  

 それと、内覧会開催の広告も大事です。1週間前に、周辺5㎞くらいにはポスティングをするように手配をかけましょう!ちなみに、コンサル業者を通じてポスティングの手配をかけましたが、地域の一部は配布されておりませんでした。コンサル業者に抗議しましたが、逆切れされました。

 ちなみに、内覧会って、地域の患者様のみならず、他の整形外科クリニックから流れてくるような患者様も来院されます。後者の人は、変な人が多くて、初対面にもかかわらず、いきなりクリニックのダメ出しをしてきたり、さも、ご自身が医療に関して熟知しているかの如く、マウントを取って話をしてくるような人もいます。内覧会ということで、にこやかに対応したいのに、眉間にしわが寄りますね(笑)。

2.患者推移

 整形外科は、適切な言葉ではないかもしれませんが、薄利多売です。患者1人当たりの医療点数が低いため、たくさん来院していただかないと利益が出ません。一般的な内科の2倍の患者を診察する必要があります。  開業当初、患者数は20名程度であり大変苦しい時期が続きました。もちろん、初診の方ばかりなので、初診料の算定は有難かったですけどね。当院は、開業時、常勤療法士が1名であったため、運動器リハビリテーションの施設基準は(Ⅲ)でした。いかに早く(Ⅱ)に上げられるかが、重要でしたが、何とかかんとか、開業4か月後には、(Ⅱ)で算定することができるようになりました。(Ⅱ)になれば、運動器リハビリを提供している患者に対して「リハビリ総合計画評価料」の算定ができるようになります。毎月1回は算定可能なので、売上upにつながります。  

 開業9か月の現在では、平均すると60~65名ほどになりましたが、整形外科で100名・150名と診察しているクリニックもあるようなので、私のクリニックはまだまだヒヨッ子です。開業後のGWに1日だけ営業した時に、1度だけ、100名を超えましたが、患者様とゆっくりお話する時間があるとは言えなかったです。ほどよく、80名くらいがいいのかもしれませんね。  

 新患患者様は重要です。1日10名くらいは来ていただきたいですが、波があります。

3.不要だったもの

 勤務医時代には、自分の仕事のことだけ考えていればいいのですが、開業するとなれば、スタッフ目線・患者目線でも、考えなくてはいけません。また、勤務医時代は、病院にいろいろ検査機器があるからこそ検査をオーダーするのであって、勤務医と同じ感覚のまま、開業すると、絶対必要だと思っていたものがそれほど必要でなかったりします。慌てて導入すると時期尚早なことがありますので注意してください。  

 開業前に、これは最低いるだろうと思っていて、結局ほぼ使っていないものや台数が多すぎたものを上げます。  

・ストレッチャー(まったく使用せず)
 
・車いす(2台購入。1台で十分)
 
・薬箱(2段重ねで、どちらもまったく使用せず。今は院外処方ですからね)
 
・マイクロ波(2台購入。1台で十分)  

・腰椎牽引(2台購入。1台で十分)  

・汚物流し台(1か所はトイレ横、もう1か所は処置室だが1箇所で十分)
 
・尿検査機器(ほとんど使っていない)  

・患者用モニタ画面(予約の順番を流している、院内紹介のビデオを放映している等で3台あるが、2台で十分)  

・オフィス用複合機(これは、導入費用やランニングコストをしっかり考えた方がいいです。ずばりクリニックレベルでは、家庭用の複合機で十分です)。

4.スタッフ退職に伴う新規募集

 どこの業界でも、そうですけれども、日本は人口減の影響で、働き手が少なく、売り手市場です。医療業界も同じで、なかなか欲しい人材が集まらない。募集すら無いという状況もあるようです。

 当院は、ここ2~3年は、スタッフに恵まれていますが、数年以内に、定年による退職が予想されます。小さなクリニックですから、1名退職後の穴埋めは、死活問題なんですよね。

 開業1~2年後だったかな、受付スタッフやリハビリ療法士の増員を考えていた時、ハローワークや有料の紙媒体での広告等でスタッフ募集をしました。当時は、まだ買い手市場だったので、ちょくちょく募集がありました。

 しかしながら、今から3年前に、療法士が退職することになった時は、すでに売り手市場になりかかっていたのか、通常の募集では、ほとんど療法士の応募が無い状況でした。

 開業当初と異なり、利益もそれなりに出ていたので、税理士に相談の上、費用はかかりますが、転職サイトで応募することにしたところ、すぐに見つかりました。転職サイトの各企業にもよりますが、雇うスタッフの年収の20~25%を、その企業に支払う必要があります。理学療法士であれば、1名ざっくり100万円でしょうか。

 なかなかスタッフが集まらないと、他の働いているスタッフに仕事のしわ寄せが来て、そのスタッフも疲弊し、退職となれば、大変痛手になります。

 従って、私としては、今後、スタッフが必要になれば、転職サイトに依頼します。

 転職サイト経由で、勤務することが決まっても、油断するなかれ!新しいスタッフが無職ならば、すぐに入職してくれますが、多くは、前職を退職していないという状況です。内定通知をしても、入職は、3か月後とか半年後ということも結構あります。

 注意すべき点は、転職までに、半年猶予があれば、気が変わったとか、前の医療機関に引き留められたとかで、辞退する人が出てきます。よって、私的には、2か月以内に入職してくれる人を選ぶのが良いと考えます。

 過去、転職サイト経由で入職することになっていた療法士がいましたが、入職1週前に突如、「妻の理解が得られなかったので辞退したい」という信じがたい発言をする者がおり、転職サイトのスタッフも激怒していました。そりゃ、そうですよね。

 ちなみにそのスタッフ、二転三転して、最終的に、やっぱり当院で勤務したいとのことで、入職する運びとなりました。ラッキーなことなのか、ルール違反なのかは、私には判断不可ですが、最終的に、転職サイトを介さずに、入職することになり、その分は、費用が浮いたのは良かったと思います。ただし、そういう、自身の仕事を決めるのに優柔不断な人間は、実際のところ、仕事はあまりできませんし、有給のことや昇給は細かく質問してくる上に、空気読めない感が満載で、今のところ、クリニックでお荷物扱いです。もちろん、昇給もありませんし、賞与も低く抑えています。

 退職するスタッフにも注意が必要です。職場でのイジメ・パワハラ、また、その人自身の仕事上での問題がなければ、何もトラブルになることはありませんが、中には、退職させられたとか、精神的にうつ病になったとかで、こじらせる輩がいる場合もあるかと思います。幸い、当院は、お局ナースが過去に1名いましたが、割と、すんなりと辞めて行きました。他の受付スタッフにも有ること無い事言って、皆で辞めてしまいましたが、それだけで済んだので、ラッキーと思わないといけませんね。これに関する記事は、ここにも記載しております。

 ※民法的には、退職前14日前に通知していれば、退職可能なのですが、個別の雇用契約書には、退職希望の3か月前には、申し出するように記載しています。どちらのルールで、退職するかは、スタッフ次第ですが、常識ある人間ならば、後者を守ってくれると思います。よって、念のため、雇用契約書には、退職までの期間を記載しておいた方が良いと思います。

5.個人事業継続か、法人化するか・・・

 クリニックを開業して、多くの先生方は、利益が多くなると法人化するかと思います。 

 法人化するか、個人のままで行くかは、税理士から提案があるはずです。 

 法人には、医療法人とMS法人がありますが、MS法人については、私は、理解していませんので、ご自身の税理士に相談してみてください。 

 法人にする表向きの理由は、信頼度が上がるということに尽きると思います。逆を言えば、いい加減な経営はできないということですね。管理すべきことは管理して、個人と法人を明確に分ける必要があります。 

 法人化の本音は、節税対策に尽きると思います。経費が認められやすくなる、役員報酬による所得分散かと思います。

 例えば、自家用車、もちろん開業して個人事業の時も、個人事業として、経費化できます。しかしながら、2台目の自動車とか、バイク(訪問診療用の名目等)も経費にしようとしても、税務署から否定されることがあります。法人化していれば、否定されることが少なくなるようです。

 また、所得分散というのは、成人以上の家族を役員にすることで、利益を分散し、その結果、節税になります。

 さらに、銀行からの追加融資も受けやすくなります。もっとも、法人化した時点で、融資を受ける必要性は無いほど安定しているはずです。まぁ、事業拡大や新しい医療機器導入には融資が必要かもしれませんね。

 法人化のデメリットは、将来でしょうか。個人であれば、跡継ぎが無ければ、閉院も簡単なようですが、法人の場合は、時間や労力が必要なようです。テナントで開業していれば、法人化していても、大きな問題はありませんが、土地・建物が法人名義であれば、継承でもしなければ、国に接収されてしまいます。

 あとは、法人化しても、開業時(個人)の借金が法人に付け替えできる金融機関と、できない金融機関があります。私の場合は、付け替え不可でしたので、今も、医開業時の借金が10年以上残っています。

 すなわち、例え、私が理事長を解任されたとしても、借金は残っているということですね。法人という名の実質個人事業ですから、借金を帰すまでは、簡単に法人廃止はできませんね。